楽園までの距離は遠い

宝塚歌劇に関する日々を綴る。観劇感想やらいろいろ

唐突だけど、蒼羽りくさんに落ちた話

自分の周りを取り巻く空気がじめじめとしてきて、あー梅雨入りももうすぐなんだな嫌だな、と思っていた5月の末。私はついに夢見ていた場所、東京宝塚劇場へとやってきた。




真風涼帆さんと星風まどかさんの宙組トップ就任公演である『天は赤い河のほとり』を観劇できることになったのは、ひとえにサンケイリビングさんのおかげである。
私はどうしてもこの公演が見たくて(友の会には入っていません)、各種チケットサイトの抽選、そして一般発売と自分なりに手を尽くしてみたのだが結果は惨敗。宝塚の土日公演なんて一般でチケット取るの本当に大変なんだな、と今更ながら思い知りました。
それから数日後、悲しみに打ちひしがれる私のもとへ『My First Takarazuka』という企画の当選通知が届いたのである。これはサンケイリビングさんのサイトで年間を通して行われている企画のようで、今まで宝塚を見たことがなかった人に楽しさを知ってもらおう!(要約。でも初めての人じゃなくても参加はできる)というもの。OGさんのトークショーがついているプランと、チケットのみのプランがあり、私はトークショーつきのほうを一か八か申し込んでおいたのです。あのときの自分の決断力を褒めてあげたい…よくやった!そしてサンケイリビングさん本当にありがとうございました。

私が参加したのは、元宙組トップ娘役の実咲凜音さんと元花組の月央和沙さんのトークショー。お二人とも綺麗でそして面白かった。これは後日また書きたいと思う。




私は真風さんがきっかけで宝塚に興味を持ち、その後いろいろと過去の作品などを少しずつ見ていった過程で、愛月ひかるさんのお芝居に対する姿勢にとても感銘を受けていた。ファンになる以前の私がイメージしていた宝塚のお芝居は、ベルばらのようなビジュアルとして美しい(といっては語弊があるかもしれないけど)ものだったり、豪華絢爛な世界観の中繰り広げられるもののような感じだと思っていた。当然、男役の人たちは憧れの王子様のようで、娘役の人たちはキラキラと輝くお姫様のような。

そんなイメージは過去の作品を見ていく中でだんだんと薄れていったけれど(よく登場人物が死ぬなぁ、と思いはじめる)、とくに宙組の『神々の土地』を見たときに、ラスプーチンを演じる愛月さんの風貌と迫力には本当に度肝を抜かれた。宝塚ってこんな役もあるの…?華やかな世界観とはかけ離れた、不気味で得体の知れない空気を出せる人がいるんだ…!と、私はかなり感動して(ラスプーチンに感動するのもアレかもしれないけど)そこから「愛月さんは役者としても素敵だな」と注目するようになった。
宙組の公演に行きたいと思ったのも、愛月さんのお芝居が生で見てみたかったからという理由からで。しかし宝塚のファンになってからまだ日が浅い私は、失礼ながら宙組の組子さんたち全員のことは把握できないまま、当日を迎えた。





天は赤い河のほとり』は漫画原作なので、観劇までに読破しておこうか迷ったのだが(Twitterでも読んだほうがわかりやすいという意見を見たので)、なんとなく予備知識なしでまっさらな気持ちのまま挑みたいなという自分の思いもあり、物語の簡単な設定と主な登場人物だけを頭に入れておいた。

初めて足を踏み入れた東京宝塚劇場。美しく輝くシャンデリアとロビーの階段と優雅に流れるピアノの音色。テレビや何かで見たときの印象よりもコンパクトな造りだなぁ、と思いつつ(まぁでも縦に長いよね。高層なのは東京っぽい)、真っ先に向かうのはキャトルレーヴ(笑)
舞台写真をわんさか購入し、2階にある売店で公演デザートを食べて(シトラスの果ゼリー、さっぱりしてて美味しかった)、いよいよ客席内へ。
今回、チケットは当日手渡しだったので、自分が思っていたよりも前方のお席で銀橋からの距離の近さにドキドキしながら開演を待った。






真風さんの開演のアナウンスがあり、いよいよ『天は赤い河のほとり』の幕が開いた。

壮大な音楽と共に出演者が勢揃いするオープニングの場面はとにかく圧巻で、それこそ漫画からそのまま飛び出してきたかのような完成されたビジュアルに私はとにかくうっとりしていた。


先ほど書いたように、私は愛月さんのお芝居が見たくてここに来た。原作ファンの愛月さんが造り上げたマッティワザはそれこそ完璧で、威圧感のある佇まいといい立ち回りのときの迫力といい(終盤のスローのアクションが素晴らしすぎて主役そっちのけで見てしまったのでいろいろと見逃している。ゴメンなさい)本当に本当にカッコよかった。





しかし、オープニングの場面で、そのマッティワザよりも先に目に留まった人物がいた。
黒くて長めの髪、紺色のマントをひるがえしながら軽やかに華麗に踊るその人は、鼻が高くて優しそうな目をしていた。私は心の中で「あの!めっちゃ綺麗な人がいるんだけど!」と大興奮しながらオペラグラスをその方へとロックオンした。

オープニング後のシーンの台詞で、その人の名前がルサファということを知る。



この舞台は原作の漫画をぎゅっと凝縮した内容であるため、それぞれの登場人物の細かなエピソードの全てを網羅することは難しい。それでも宙組のみなさんは自分が演じるキャラクターの心情を表現するためにとても細かいお芝居をしている。いろいろなところでいろいろな登場人物のお芝居が同時進行しているため、本当に目が足りないなぁと思う。何度も足を運びたくなる気持ちはよくわかる。


ルサファが出てくるたびにオペラグラスで追っていた私は、ヒロインであるユーリ(星風さん)に向けるその眼差しや表情やしぐさから、ルサファの心の中に秘めた想いを感じた。原作ではそのあたりも出てくるようだけど、宝塚版ではハッキリとした台詞としては出てこない。それはザナンザ(桜木みなとさん)も同じで、お二人ともユーリを想う気持ちとカイル皇子(真風さん)を慕う気持ちがあり、その立場上とても複雑な心中で見守っていることが伺い知れた。

しかし終始ルサファかマッティワザを目で追っていたので、メインのストーリーから外れた場面ばかり脳裏に焼き付いてしまった……よく写真や映像などで見たところはどこだったのだろう(とくにオロンテス河の戦いでの、せり上がってくるラムセスを見逃したのは不覚だと思っている)、と非常に申し訳ないような気持ちになりつつ幕間の時間になった。





幕間の休憩中、パンフレットをぱらぱらとめくってルサファを演じていた方の名前を調べた。蒼羽りくさん。ふむふむ。





次は宙組ではおなじみのレビュー『シトラスの風』。私は朝夏まなとさんがトップ時代の全国ツアーのものを映像で見たことがあり、あの有名なレビューが生で見られるのかー!とワクワクしていた。





シトラスの風』が始まると、私は無意識のうちに蒼羽りくさんがどこにいるかをすぐに探したのである。





優しく頬笑みながら優雅に踊る姿はとても美しくて、見ているこちらもニコニコと笑顔になってくる。

今となっては、このときすでに私はりくさんに完全に心を奪われていたのだな、と思う。

正直、りくさんが華麗に踊る姿しか記憶にないくらいである。


もちろん、本来の目的であった愛月さんのダンスも歌も私はとても好きだ。男役としての立ち姿もカッコいいし、役者としても素晴らしいと思う。

それに、今回の舞台で芹香斗亜さんの魅力に落ちた人たちがたくさんいるのも聞いていたので、私もそうなっちゃうのかもしれないなぁ…ニヤニヤ……なんて観劇前は思っていたのだ。
確かにカッコよかった。銀橋で観客を釣っているのを見て、あの近くの席の方たちは生きていられるのだろうか、という気持ちにすらなった。



しかしである。
自分の感想は、いやーカッコよかったーうんうん、という非常にあっさりとしたものだった。そのときはまだ気付いてなかったけど、りくさんに落ちていたのであっさりしていたんだと思う。恋とは突然にやってきて、ものすごいスピードで心をかっさらう。恐ろしい。





夢心地でふわふわとした気分のまま帰宅し、それからはとにかくりくさんの入り出の写真やらお茶会のエピソードやらを検索してはかき集め、家にある歌劇やグラフの記事をもう一度読みなおし、さらに『王妃の館』のDVDを購入した。買ってよかった…お芝居もショーもりくさん活躍しまくりじゃないですか……クレヨンちゃんマジかわいい。


千秋楽ライブビューイングのチケットも買ったし、先日ついにお手紙も書いてしまった……ちなみにここまで約一週間の出来事。


今のところWSSは見に行けないし、次はいつりくさんに会いにいけるかわからないけど、こんなに楽しい想いができるなんて宝塚って本当に素晴らしいなぁ、と思うのです。興味があったのに一歩を踏み出せなかった過去の自分に、早く宝塚を見に行けよ!とタイムスリップして言いたい気分。